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CSRの脱構築(3)-プロスポーツのCSRを考える その1-

2011年12月16日

【中日・落合監督の"オレ流"采配】
 筆者は何年振りかで日本シリーズを観た。テレビ観戦で、7戦すべてではなく第1戦、第2戦と最終戦の3試合である。筆者はそれほど野球に詳しいわけではなく、小学生の時に遊びで草野球に親しんだ程度であるが、観戦したのはソフトバンクの強さの理由を見たかったからである。今シーズン、40を超える貯金をつくり2位を15ゲーム以上の差をつけて圧勝したのは只者ではない。2勝1敗のペースを貫き通したわけだが、野球は試合数が多いので、おそらく現場の選手は全勝優勝を飾ったような気がしたのではなかったか。


 そんな気持ちで見始めたのだが、あにはからんや、印象に残ったのは中日の戦いぶりであった。とにかく打てない。日本シリーズという、独特の緊張感のある試合であったこともあろうし、普段の公式戦よりも、ピッチャーが気合を入れて臨んでくるということもあるのだろう。それにしても、点が入りそうな気配がほとんど感じられないのである。素人からすると、よくあれで最終戦まで持ち込んだものだと思うのだが、テレビの解説によると、あれが中日のペースなのだという。シーズンを通じて、打てないながらも点を与えず、少ないチャンスを生かして僅少差で逃げ切るのが中日の真骨頂であるらしい。それはそれで一つの考え方ではあろうが、それにしても辛気くさくて見ていても圧倒的にツマラナイ。失礼を顧みず申し上げれば、スタンドで応援している中日ファンが映し出されるのを見て、彼らはよく、こんなチームを応援しているものだと感心したほどだ。


【球団としてのCSRとは?】
 その中日を8年間にわたって率いてきた落合監督が今シーズンで退任する。この8年間の成績はすべてAクラス、優勝は4回、日本一は1回と、見事なものである。それでありながら、今シーズンの途中、首位争いのさなかにシーズン終了後の退任が発表され、波紋を投げかけることとなった。水準以上の成績を残していながらなぜ解任になるのか、ということである。こういった意見の背景には、プロスポーツはまずは勝つことが最優先であるという考え方があるのだろう。「勝てば官軍」という言葉があるが、つべこべ言う前にまずは結果を残せ、ということだ、それはそれで一理あるといえる。その観点からすると、落合監督の8年間は結果を残しており、解任される理由はないという意見も説得力があるように見える。煎じ詰めて言えば、プロ野球の球団としてのCSRは勝つことによって充足されるということになろうか。


 筆者は学生時代にサッカーをやっていたことから、野球よりは少々サッカーのほうが多少はわかっているつもりである。それで話は飛躍するのだが、スペインのサッカークラブでバルセロナというチームがある。言わずと知れたバルセロナの町にあるクラブである。このバルセロナは間違いなく、現在世界ナンバーワンの強さを誇るといってよい。国内リーグは3連覇中で今季も暫定ながら現在首位、ヨーロッパチャンピオンのタイトルもこの3年で2回獲得と、抜群の実績を誇る(この原稿は12月12日に書いている)。ここ数年のサッカー界は、「バルセロナのサッカーを打ち破るにはどのようなサッカーを展開すればよいか?」という話題で席巻されているほどだ。


【プロスポーツのCSRの重要な要素の一つ、「魅せる」こと】
 このバルセロナを語るときに忘れてはならないのは、チーム作りに哲学が貫かれていることである。その中の一つに「サッカーはスペクタクル」というものがある。つまり、サッカーは見世物であり、観客を魅了するようなサッカーを展開しなければならない、ということだ。ただ「勝つ」だけでは不十分なのである。バルセロナのCSRは「魅せて勝つ」ことだといえる。


 野球とサッカーという違いがあるとはいえ、プロスポーツとしてCSRを同じ土俵で論じることは可能であろう。「魅せて勝つ」バルセロナに対して、中日・落合監督の野球は「とにかく勝つ」といえよう。そうは言うものの、中日には他球団を圧倒して勝ったという印象は薄い。今シーズンの成績も、勝率は5割6分ちょうど、貯金は16で2位とのゲーム差はわずか2.5。冒頭に記したソフトバンクの成績とはかなり開きがある。その他のシーズンも似たり寄ったりだ。日本シリーズの戦い方と同様、どんぐりの背比べからハナの差で逃げ切るという戦い方に終始しているといってよいだろう。この結果が「見ていてもツマラナイ」ということになったのではないか。


 新聞報道によれば、落合監督解任の理由の一つとして観客動員数の減少があるという。第三者の立場から見れば、それも当然であろう。しかし当の落合監督本人は、まったくそのような批判は気にしないようである。「勝つのがどれだけ大変か、あなたは知っていますか?」とうそぶく姿が目に浮かぶ。これも一つの見識かもしれないが、球団を取り巻く重要な利害関係者にはファンがいる。ファンの目を無視した球団運営は、CSRに悖るものとはいえまいか。筆者には、落合監督の解任はCSRを無視した独善的なプロ意識の必然的な結果であったと思われる。


筆者:円寂


※この記事は編集部の都合により、12月16日の掲載となっています。あしからずご了承ください。

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