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海外に住む若者の視点(4)- 国家主導のソーシャルビジネス振興政策が失敗するワケ-
2011年12月16日
【国家主導のソーシャルビジネス振興政策が失敗するワケ】
"政府の補助金は死の接吻だ" -ミルトン・フリードマン-
2008年、経済産業省の主催で「ソーシャルビジネス研究会」が開かれ、今後、ソーシャルビジネスを普及させるための方針が決定された。逆説的だが、政府が産業促進のために「●●研究会」などを開いたら、「●●は成長産業になりえない」と考えたほうが良い。基本的に、こういった産業活性化政策というものはかなりの確率で失敗する。なぜ政府主導の産業活性化政策は失敗するのか。
まず、見込みのある産業というのは、政府が主導しなくても市場から勝手にお金が流れ込み、勝手に市場が成長させるのである。政府の主導による産業活性化政策というものは、市場原理に反する極めて人為的なものなのだ。NPOだろうが、企業だろうが、投資のプロの目に止まらないものや消費者から支持を得ないものはやはり失敗する。ましてや政府の官僚や大学教授などはマーケットに関しては素人同然で、彼らの決定により多少資金が流れ込んだとしても、長期的には殆どの場合成功しない。そして多くの場合、彼らの意思決定には市場原理とは別のインセンティブが働いていることがある。
2008年の「ソーシャルビジネス研究会」では、今後の政策的取り組みの一つとして、経済産業省の中小企業支援施策にNPOも対象とするべきだということを提言された。これは従来行われていた中小企業振興支援政策にソーシャルビジネスを行うNPOも補助金支給対象に加わるということだ。基本的に政府の補助金というものは、短期的には創業資金、運転資金として有効だが、長期的には企業、NPOの経営資源を政府に向けさせるインセンティブになってしまい、消費者の利益のための努力がら遠のいてしまう要因になる。これはレント・シーキングといって、企業・NPOの限られた経営資源の配分を歪めてしまう。本来、企業というものは顧客、つまり消費者のために企業努力をしなければならない。事実、そのために今日まで多くの企業がしのぎを削ってきた。消費者のために努力をして、コストを削ったり、価値ある商品を提供した企業が市場から評価されるのである。その努力が政府への補助金を得るためのロビー活動に費やされてしまうインセンティブがあると、経済成長の原動力とはならない。レント・シーキングは、消費者を一切豊かにしないのである。経済成長とは、企業が消費者のために創意工夫することによって促進されるものだ。補助金は経済成長の芽を殺す。そういう意味で、フリードマンは補助金は死の接吻という表現を用いたのだろう。
【いわゆる「ソーシャルビジネス」を普及させるためには】
そもそも、「ソーシャルビジネス」という括りがそういったビジネスの普及を阻害している。
上述の「ソーシャルビジネス研究会」によると、ソーシャルビジネスの定義は、
①「社会性ー現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。」
②「事業性ー①のミッションをビジネスの形に表し、継続的に事業活動を進めていくこと。 」
③「革新性ー新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。」
の上記3つがあることとしている。これは一般企業の定義と何も変わりはない。世の中の価値を提供しているすべての企業は、これらの要件を満たしている。人々のニーズに応え、新しい価値を開発、提供し、マネタイズできるよう努力している。にもかかわらずソーシャルビジネスだけを別の括りにして、その産業だけを促進しようとする事自体がソーシャルビジネスの普及のインセンティブの芽を摘んでいるのではないか。そしてそういった括りこそが、新たな利権を産み、企業やNPOをレント・シーキングに向かわせるのではないか。
いわゆるソーシャルビジネスを「ソーシャルビジネス」として括らなくなったらどうなるか。ソーシャルビジネスを飯の種にしてきた企業関係者、大学教授や関係省庁の官僚は利権や職を失うだろう。それはそれで良いのではないか。彼らはまた新しい仕事を探せばいいだけなのだから。
参考資料
『ソーシャルビジネス研究会報告書』- 経済産業省
『資本主義と自由』- ミルトン・フリードマン (著)村井章子(訳)
※この記事は編集部の都合により、12月16日の掲載となっています。あしからずご了承ください。
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