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海外に住む若者の視点(3) -日本の行き過ぎたステークホルダー資本主義を正そう-

2011年12月01日

【日本の行き過ぎたステークホルダー資本主義を正そう】
 ステークホルダー資本主義(公益資本主義)とは、企業活動によって得た利益はすべてのステークホルダーに公平に分け合うべきだという考え方だ。そしてステークホルダー資本主義を唱える人は「強欲な株主が莫大な利益を得る株主資本主義ではなく、これからは従業員、取引先、地域コミュニティ等ステークホルダー全体の利益へ」などと耳障りの良いことを言って株主資本主義を批判する。


 結論から言えば、株式会社の性質上、他のステークホルダーの利益を差し置いて株主だけが莫大な利益を得るということはあり得ない。そしてステークホルダー資本主義によって全てのステークホルダーが公平に利益を分配するということも不可能なのだ。


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 上の表は架空のA株式会社の損益計算書だが、このように会社が創りだした価値というのは顧客、取引先、従業員、債権者、国や地方公共団体、経営者、株主の順で利益が配分される。つまり株主は一番最後に利益を得る立場にあり、一番弱いことがわかる。経営に失敗し、利益配分のプロセスで不整合が生じると株主の利益はゼロになる。利益がないどころか、ステークホルダーが離れ、株価が下がって投資した金額全てを失うリスクさえ背負ってるのだ。だからこそ一番立場が弱く、なおかつ一番リスクをとっている株主がガバナンスを効かせれば、健全な経営が実現でき、上記のステークホルダー全てがメリットを享受できる。社会全体の利益になるのだ。


 それぞれのステークホルダーというのは、利害関係が一致していない。例えば基本的に従業員というものはできるだけ最小限の労力で最大限の賃金を得たいと考え、経営者は最大限に従業員を働かせ、最小限のコストで生産したいと考えるものだ。利害が対立するステークホルダーの中でコンセンサスをとるということは大変難しい。何かを決断するという行為には何かを排除するという決断も伴うからだ。そして結果的に決断を先延ばししてきたという現状がある。それをステークホルダー資本主義論者たちは「長期的視野を持った経営」などという綺麗な言葉で片付けているが、実態は決断のできない日本的経営そのものだ。


【株主資本主義は本当に万能でベストなのか】
 株主のガバナンスによって会社を経営する株主資本主義は、必ずしもいいことばかりではない。株主利益を追求した結果、周縁ステークホルダーに不利益が生じてしまう場合もある。つまり企業活動のプロセスで外部不経済を伴ってしまう可能性があるのだ。時に外部不経済は、会社が産み出した価値以上の損失を社会に与えてしまうこともある。それは株主や会社にとって、そして社会全体にとっても芳しいことではない。株主資本主義は万能ではないのだ。
株主資本主義に必要なものは何か。それは機能した政府と、機能した市場、そして機能した株主である。


 外部不経済は政府によって改善することが期待できる。その費用として法人税などの税金を企業は払わなければならない。機能した政府というものは常に社会全体の利益を考え、社会全体の利益を阻害される場合には強制力のある法的措置や規制などを敷くことが出来るのだ。機能した市場とは、つまり人々に情報が完全に行き渡っている状態である。実際には情報を完全に行き渡らせるということは非常に難しいが、それに近づける努力をすることは可能だ。会社が産み出した価値が社会全体の損失よりも大きいという情報を全ての市場関係者が得れば、彼らの購買行動に影響が出る。ボイコットである。ボイコットによって、大きな外部不経済を伴う企業活動は淘汰されるだろう。


 日本的経営の特徴の一つとして、株式持ち合いが挙げられる。株式の持ち合いをしている企業同士は、複雑な利害関係が発生するすることがあり、株主が適切にガバナンスを効かせることが難しい。その結果、企業活動が制約されてしまい、企業価値の最大化へ繋がらない場合がある。株主が企業へ投資するインセンティブは企業価値の最大化の為なのだ。これを常に意識した株主こそが機能した株主と言えるだろう。社会全体の利益を考える政府、購買行動に必要な情報を持った市場、企業価値の最大化を意識した株主によるガバナンスが健全な経営を促し、すべてのステークホルダーに対しても公平に利益を分配する。


 各者が機能していない現状で株主資本主義を目指すことは様々な不整合が伴う。ただ、ステークホルダー資本主義を唱え、長期的視野を持った経営などをやっていたら、それこそ社会全体に不利益が生じてしまう。現代社会はめまぐるしく変化している。そして不確定だ。タイムマシンがない限り、長期的視野を持って経営するということは非常にリスキーである。株主資本主義はベストではないが、現状でステークホルダー資本主義よりもベターだと筆者は考える。


 すべての組織にはミッションがあり目的がある。それぞれの組織のミッション、目的を忠実に追いかけている社会こそ、機能した社会で、最大の幸福が得られる社会なのではないか。

参考資料:日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 - 藤沢数希(*1)
       海外に住む若者の視点(2)-消滅を目指す組織論- 安村友秀(*2)

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