障害者を雇うと企業は得をする

 CSRジャーナル連載の最後にあたり、今回は、私が一番伝えたかったことを書かせていただきたい。
 それは、「障害者を雇うと会社は得である」ということである。しかも、障害の程度が重ければ重いほど、「得」である。思いやりでも、義務でも責任でもCSRでもない、「得」だから障害者を雇いましょう、そう伝えたい。

【成長意欲が高い】

 弊社就労移行支援事業所「ジョイワークセンター」でさまざまな障害のある方の就労に向けてのトレーニングにかかわっているが、驚かされるのは彼らの成長意欲の高さである。

 たとえば20歳ころに発病、療養のためほとんど社会とかかわりを持たないまま30台半ばを迎えた方がいる。就労経験はゼロに近いため、何をやりたいか、それ以前に仕事ってどんなものがあるのかわからない、という方がいる。当センターでは各企業から受注してきた業務をトライアル的に体験していただき、まずその方の興味や強みを発見する。そして、それを伸ばす方法を教える。それだけで、こちら
の役目は終わりである。後は乾いた雑巾が水を吸い取るように、スキルを急スピードで習得していく。

 約10年間、社会の中での役割を欲し続けてきた思いが、やっとかなったわけで、仮想業務に対する意欲的な取り組みは並々ならぬものがある。障害が重く、今まで社会中での役割が与えられていなかった方ほど、成長意欲が高く、いろいろな意味で企業に好影響を与える、それが私の持論である。

【社員が多様性を体験できる】

 企業は、というか人間社会は、いろいろな人がいて、個々人の弱みをカバーし合い、強みを生かしてこそ発展できる。いわゆるダイバシティ経営の意義である。障害を持つ方は、強みと弱みがはっきりしている場合が多い。そういう社員と働くことで、社員はダイバシティ経営のすばらしさを体験できることができる。障害が重い方の方が強みと弱みがよりはっきりしているケースが多く、よりそのすばらしさを体験することができるのである。

【弱みを強みに転換する】

 たとえば、短時間しか働けない障害のある方がいた場合、とく中小企業に見られる
「週に2日だけお願いしたい仕事」などには、その方の障害の特性と企業の事情が
マッチする。また、耳の聞こえない方はその分視覚における能力が高まり、デザイン
の分野で高い能力を発揮する方もいる。弱みと強みは裏返しである。可もなく不可も
ない平均的な場合よりは、企業の見立てにより、障害のある方の方がより企業に
とって、ハイパフォーマーとなり得る。

【まとめ】

 とかく社会は障害のある方を特別な方と見がちで、保護する対象と見るケースが多々ある。しかし、これから高齢化社会を迎えるにあたり、多くの方が障害者となる(身体障害者手帳保持者のうち、約85%が60歳以上である)。また、当人が障害を持たなくとも、高齢化社会には両親の介護の問題がつきまとうわけで、親を持つすべての方は、就労上の障害者となり得る。働き方の多様性、ダイバシティマネジメント、ワークライフバランスなど、さまざまなキーワードがあるが、まずは思い切って障害のある方を受けれ、企業としてパフォーマンスをあげていく方策をその現実の体験から作り出していくほうが得策だ。

 ここまで書かせていただいたように、障害のある方の可能性を生かすも殺すも企業しだいだ。
それによって、上記のように高いパフォーマンスをあげることのできる可能性は大いにある。なお、上記の事例としてあげた障害のある方についての私の所感は、弊社就労移行支援事業所や私自身の約10年間にわたる障害者の就労支援を通して得たものであり、すべての障害のある方に当てはまることではないと思っている。なんといっても、限られた自分自身の経験から、「障害者の方はこうだ」と決め付けることが、一番好ましくない状況を生むと思っている。

筆者:ジョイコンサルティング株式会社 代表取締役 木村志義