CSR的広告屋のつぶやき「Vol.20 CSR×Creating Shared Value/CSV」

【Creating Shared Value】

 Creating Shared Value(CSV、共有価値の創造)。マーケティング界の巨匠、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が提唱する概念。CSRのネクスト・ステップであると言われています。「経済性」と「社会性」の両立の重要性は再三、僕も過去記事に書いてきました。ですが、日本では形式的な社会貢献的CSRはしてきたけれど、本業から生み出されたCSRとは言えないものも多かった。東日本大震災においても、義援金は多くの企業が拠出したが、それでCSR予算が終ったとか、寄付以外に特に何もしていないし、する予定も無いという企業も多いようです。経済的価値は度外視なので、もちろん、継続はないと思います。何もしないと非難されるから仕方なくという企業の姿勢は残念でなりませんが、これもまた事実なのです。

 CSVはソーシャルビジネスを立ち上げよ、という提言も含まれています。自社の独自資源と強みを、社会が抱える課題に照らし合わせ、新しい製品やサービスによって解決することを強く打ち出していこう、と。去年の終わりに、このCSVの話しを聞いて、CSRはダメ。CSVはOKというイメージだったが、CSRという大きな枠の中で、CSVという方向性を持たせようという感じ。竹井善昭氏がいう、「CSR3.0」に非常に近い。で、僕はどう思ったかというと、結局、広告的にも重要な考え方なんじゃないかと、最近思う。共有・共感だけでなく、一緒に「創る」ことが重要。イケア効果もあるのだろう。つまり、“一緒に創る”ということ。企業とステークホルダーの皆で、企業を造り上げて行こうという流れである。マーケティング界の巨匠が言うのだから間違えはないが、日本にはまだまだ馴染まない。3月11日以降、これから様々な業界でこのCSVの考え方が広まって行くと思われる。

 ちなみに、イケア効果とは、ハーバード・ビジネススクール助教授のマイケル・ノートン氏が提唱(証明)した、「手間をかけることで愛着が強まること」という行動心理学の学説。ある意味、ミロのビーナス理論に近い。ミロのビーナス理論とは、「未完の美」のこと。未完成な事象は、自分の中でその先を想像でき、勝手に美しくイメージングするということ。つまり、答えがない(完成していない)ものに、「自分の感覚」を挟み込み、創り込んで行くことに、喜び・愛着を見い出すということ。共有・共感を自分と誰かで創る。それが、CSV、共有価値の創造なのかなと。一方的なコミュニケーションではなく、ステークホルダーと一緒にストーリーを構築していくと、ロイヤルカスタマーも増えて、売上げにつながる。CSRによる経営にとってはどうかすべてはわかりませんが、少なくとも、コミュニケーション領域においては、CSVは力を発揮する概念だと考えています。

【エコはSocial Goodではない?】

 東日本大震災後、CSR担当者も広告・広報担当者も実務レベルで悩みが尽きない日々を過ごしていると思います。手探りの日々はまだまだ続くでしょう。Webサイトのお悔やみ文の掲載をいつはずすか、とか、次のCMはどんなトーンでいこうかとか、他社のマネはしたほうがいいのか、などなど。しかし、大震災における当事者意識を持つ人々に一方的な広告コミュニケーションはもう通用しない。そんな取扱説明書みたいな広告やコミュニケーションは、彼らに届くことすらないでしょう。

 「エコです!」なんてアプローチもあの大震災の衝撃に陳腐化してしまった。見栄えだけの、Social Goodでは、誰の心も動かない。広告クリエイティブも苦心を余儀なくされるでしょう。企業の環境コミュニケーションのハードルが何段階も上がりましたが、ここをクリアーし、多くの人に共感を届け、共有を作り上げる事ができれば、コミュニケーションとしては成功なのかもしれません。Creating Shared Value。共有価値の創造。これが、今後のソーシャル・コミュニケーションの切り札になるでしょう。ご存知無い方は、関連書をあたって、自分ごとに落とし込んだほうが良いかもしれませんね。

筆者:ソーシャル・コミュニケーション・デザイナー 安藤光展(@Mitsunobu3)